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陸水環境におけるLTERに関連した資料

日本陸水学会 将来計画検討委員
鎌内宏光(創価大学)

since: 2004.10.10
last update: 2005.7.15

 LTERとはLong-Term Ecological Research Network の略語で、 長期的で大規模、学際的な生態系研究のためのプログラムです。

 日本陸水学会では2004年新潟大会で 「陸水におけるLTERの可能性」と題した自由集会を行いました(企画者:鎌内宏光)。 自由集会ではLTERとはなにか、 そして日本の陸水研究におけるLTER活動のポテンシャルについて 発表、討論を行いました。

 このページは日本陸水学会員に限らず湖沼や河川など 広く日本の陸水環境で研究している皆さんに、 LTERとは何かを知っていただくための情報をweb資料を中心に紹介していきます。 また日本陸水学会では将来計画検討委員会の活動の一環として、 陸水環境におけるLTER活動に関連して 情報交換や議論のためのメーリングリスト(ML)を立ち上げましたので紹介します。 このMLは学会員の資格に関係なく誰でも参加できます。 また2005年大会(大阪教育大)では 学術シンポジウムのテーマにLTERが取り上げられますので、 こちらもご案内します。

目次

1.LTERとは何か?
LTERは1980年にアメリカで始まった大規模長期生態系研究プログラムです。 その後、各国で展開されている同様のプログラムと連携して International LTER Network(ILTER)として発展し、 2004年現在で28カ国が加盟しています。
2.日本におけるLTER活動の現状
日本でも森林を中心にLTERが立ち上げられています。その現状を紹介します。
3.記録:2004年日本陸水学会新潟大会 自由集会「陸水におけるLTERの可能性」
自由集会での話題提供の内容と総合討論の様子を紹介します。
4.日本の陸水環境におけるLTERについて議論するメーリングリストの紹介
日本の湖沼や河川環境を研究する上でLTER(のようなプログラム)は必要でしょうか? 必要な場合、具体的にはどのような活動をすればいいのでしょう? 参加資格はありません。議論しましょう!
5.2005年日本陸水学会大阪大会におけるLTERシンポジウム開催の案内
陸水学会でLTERをテーマにシンポジウムが開かれることになりました。 陸水学とLTERの接点を探っていきます。

1.LTERとは何か?−海外におけるLTERの現状

http://lternet.edu/

アメリカのLTERのページです。 サイトのリストや現在進行中のプロジェクトなど膨大な情報への入り口です。 LTERがサイトのネットワークを基幹にしていることがよくわかります。 文書ライブラリ は膨大なテキストへの入り口ですが辿り着きにくいので別にリンクしておきます。

http://www.ilternet.edu/

ILTERのページです。プロジェクトの目的や組織、加盟国のリストや 各国のプログラムへのリンク集があります。 日本は「加盟準備中」ですので正式な加盟国とはなっていません。 正式な加盟にはいくつかの要件があります。

アジア各国のLTERおよびLTERに類似するプログラムのいくつか を紹介します。

http://klter.kookmin.ac.kr/index.htm

韓国のLTER(KLTER)のページです。 KLTERでは森林と河川、湖沼にサイトを展開しています。

http://www.cern.ac.cn:8080/

中国のCERN(Chinese Ecosystem Research Network)のページです。 CERNでは森林から湖沼、農地、砂漠まで36のサイトを展開しています。 また、ネットワーク・センターの整備に力を入れていることも特徴です。

http://lter.npust.edu.tw/tern/e_english/english_home.htm

台湾のTERN(Taiwan Ecological Research Network)は 森林を中心に5カ所のサイトを展開しています。

注: ILTERに加盟していてもLTERと名乗っていないプログラムもあります。 これを"LTER like project (activity)"と呼ぶことがあります。

2.日本におけるLTER活動の現状

 日本では、フィールドサイトのネットワークであるJaLTER(Japan LTER) http://www.jern.info/jalter/ と研究者ネットワークであるJERN(Japanese Ecosystem Research Network) http://www.jern.info/j/index.html が別組織となっています。 JERNがJaLTERをサポートする形で活動が進んでいます。

 JERNではMLを中心に情報交換や議論などが行われています。 一方JaLTERでは大学演習林を中心に全国7つの森林サイトを設け、 環境省のモニタリングを受託する形で統一手法による調査を行っています。 またサイトごとに蓄積されたデータの整備を進めており、 ネットワークセンターを整備しつつあります。

 海外LTERサイト研修の レポートのリンク集 からはJERNに関連してこれまでに行われた研修のレポートにアクセスできます。

日本LTER設立の準備運動はJERNの前駆ともいうべき活動で、 野外研究サイト目録 や2000年に行った生態学会での自由集会の様子なども収録されています。 この自由集会を契機に 日本生態学会誌第51巻3号 に「日本における開かれた野外研究体制の整備に向けて」という 特集記事が掲載されました。

 第5回ILTERアジア太平洋地域会議(2004年9月、北京)にて、 次回(第6回)会議を2006年3月に日本で行うことが決まりました。 これは第2回会議が1997年に行われて以来9年ぶりの日本開催となります。 場所は京都、議長は中静透(地球研)です。 詳細はJERNのページへ。


3.記録:2004年日本陸水学会新潟大会 自由集会「陸水におけるLTERの可能性」

 2004年の日本陸水学会大会(新潟大学)で 「陸水におけるLTERの可能性」と題した自由集会を行いました(企画者:鎌内宏光)。

趣旨

 LTER (Long-Term Ecological Research)は 1980年代にアメリカで始まった研究プログラムで、 日本では長期生態系研究などとして紹介されてきた。 現在、LTERでは継続的モニタリングによる生態系の長期変動の研究と並んで、 学際的アプローチによって 各サイトが属する地域生態系を相互的に理解する試みが中心となっている。 こうしたLTERの方向性はこれまでの陸水学の方向性とよく似ているといえる。 しかし少なくともアメリカにおいては、 LTERは生態学だけにとどまらない、化学や物理学を含めた生態系科学、 さらには人文学や社会学を取り込んだ総合地域科学へと発展しているという点で、 日本における陸水学の現状とは大きくかけ離れている。

 近年LTERは世界各国に広がっており、 I-LTER(International LTER)の加盟国は2003年時点で23カ国にまで増加している。 日本では昨年、森林の研究者を中心に日本版LTER(JaLTER)がスタートし、 実際の活動も始まっている。 しかしJaLTERには現在までのところ陸水研究者はほとんど関与していない。 そこで本自由集会ではJaLTERの活動を紹介してもらうとともに、 陸水学あるいは陸水研究サイトとLTERとの将来的な連携の可能性を探ってみたい。

話題提供とコメントの骨子

1)「LTERとは何か? 日本におけるLTER活動の現状」
   蔵治光一郎(東京大学 愛知演習林)、本間航介(新潟大 佐渡演習林)

2)「アメリカにおけるLTERの現状」
   鎌内宏光(滋賀県立大学 環境科学研究科)

3)「日本における陸水学とLTERとのこれまでの関わり」
   岩熊敏夫(北海道大学 地球環境科学研究科)

4)「陸水サイトのポテンシャルと今後の方向性」
   中里亮治 (茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)

コメンテーター:楊宗興(東京農工大)、熊谷道夫(琵琶湖研究所)

総合討論の骨子

コメントの概略

 楊宗興(東京農工大)

  • 小規模サイトは現状維持で手一杯
  • (LTERを始めるにあたっては)全体的なデザインをしっかり立てる、 トップダウン方式も必要かもしれない
 熊谷道夫(琵琶湖研究所)
  • 公的機関で行っているモニタリングの見直しが迫っているように 感じる
    「何のための”長期”研究なのか?」を再定義する必要がある
    LTERの公的サービスとしての側面も打ち出す必要がある
    公的機関を動かす場合にはトップダウン型の意思決定機構を意識しなくてはならない
  • 効果的なプログラムになるようデザインする
    少ない予算でも一定の成果を挙げられる仕組みが必要
    実際に役立つ成果を出すこと=使えるデータ、質の高いデータを収集・蓄積

発言の要旨

  • IBPから学ぶべきことがあるだろう
    明確なコンセプト、実施しやすい方法論、統一された目的と方法、教育効果など
  • 既存のデータを把握することから出発するべき
    地方自治体や大学で収集・蓄積されてきたモニタリングデータをデータベースとして整備することで、現状を把握するべき
  • モニタリングの意義を打ち出す
    水道水源など公共資源の維持・管理という視点を加えてはどうか
  • 基礎データの蓄積に対する森林サイトと湖沼サイトとの認識の違い
    (温度や日照など)物理化学環境データや植物現存量データ(=基礎データ)を蓄積することの重要性に対する認識が、森林生態系と湖沼生態系では異なっている
    一般に水圏では(CTDが普及しているなど)測定が容易なことに加えて、時系列変化が大きいので、研究に使うデータ(あるいはサンプル)収集時に同時に基礎データも収集する
  • LTERに関しては森林サイトとの連携を取っていくべき

4.日本の陸水環境におけるLTERについて議論するメーリングリストの紹介

 日本陸水学会では将来計画検討委員会を中心に 日本の陸水環境におけるLTER活動の展開についてサポートすることになり、 鎌内宏光(創価大学)が将来計画検討委員になりました。 その一環としてメーリングリスト(ML)が開設されました。

このMLでは日本陸水学会員に限らず、 LTERに興味あるあらゆる方の参加を歓迎します
身分(常勤研究者、学生 etc.)に関係なく議論と情報交換しましょう!

 MLでは、日本の湖沼や河川環境を研究する上で LTER(のようなプログラム)は必要なのか? 必要な場合、具体的にはどのような活動をすればいいのか? など、何でも議論していきます。

参加したい方は鎌内宏光(創価大学) まで メールください。こちらで登録手続きします。


5.2005年日本陸水学会大阪大会におけるLTERシンポジウムの開催

 2005年日本陸水学会大会(大阪)で 学術シンポジウムのテーマとしてLTERが取り上げられることになりました。 将来計画検討委員会が企画し、 コンビーナーは濱田委員長を始め委員3名が務めます。 陸水学とLTERの接点について幅広い視点を紹介し議論することが目的です。 シンポに連動して自由集会も当日に企画しましたので、併せて是非ご参加ください。

 なお、 こちらのページではシンポのさらに詳しい情報(自由集会など)や要旨を 公開する予定ですので是非ご覧ください。

学術シンポジウム「日本の湖沼・河川研究にLTERは必要か?」

日時:2005年9月19日(月) 13:00〜17:00
コンビーナー:鎌内宏光(創価大学)、谷口智雅(立正大学)、濱田浩美(千葉大学)
企画:日本陸水学会将来計画検討委員会

シンポジウムの趣旨

 地球環境変動は今や自然科学の領域だけでなく、 社会問題として広く認識されています。 このため陸水学にも長期的な環境変動の影響や、 生態系や流域など広域的なレベルでの理解が求められています。 LTER(Long-Term Ecological Research)は こうした要求に対する自然科学的なアプローチの一つで、 陸水だけでなく森林を始めとした陸上生態系や海域、極域などの 多くのフィールドサイトをベースにした大型プログラムです。

 本シンポジウムではLTERについての理解を深めるとともに、 日本の河川および湖沼研究の現状を踏まえて LTER型のプロジェクトが必要かどうかを幅広く議論することを目的とします。 今回はLTERの方向性を「モニタリング」、「学際研究」、「地点間比較」の 三つの視点からそれぞれ話題提供していただきます。 また様々な研究背景をお持ちの4名の方々から、 さらに議論を深く広くする契機を提供していただきます。 最後に参加者を含めた総合討論で 陸水学とLTERの今後について幅広く意見交換を行います。 LTERは決して生態(あるいは生物分野)だけのプログラムではなく 物理・化学・地学などを含めた広義の生態系科学です。 皆さんのご参加をお待ちしています。 またさらに議論を深めるために自由集会も企画しましたので、 こちらにもご参加ください。

プログラム

開会挨拶:小倉 紀雄(東京農工大学、日本陸水学会会長)
趣旨説明:鎌内 宏光(創価大学)

話題提供

「水質浄化に伴う生態系変化を追い続けた諏訪湖モニタリング」花里 孝幸(信州大学)
「陸水環境を対象とした学際研究の試み」 吉岡 崇仁(総合地球環境学研究所)
「トレーサー・アプローチによる水文地形プロセス比較研究」 辻村 真貴(筑波大学)

総合討論への接点

遠藤 修一(滋賀大学)
岩田 智也(山梨大学工学部)
本間 航介(新潟大学)
三田村 緒左武(滋賀県立大学)

総合討論




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